🎸 EMG89レビュー導入
ピックアップのレビューではよく、「EMGは鋭くて抜ける」「Blackoutsは厚みがあって広がる」といった印象が語られる。──しかし、こうした評価は主観に大きく左右され、機材環境やプレイスタイルによっても変わりやすいのが現実だ。
そこで本記事では、Hughes & Kettner GrandMeister Deluxe 40(REDBOXラインアウト)を使用し、EMG89を同一条件で録音。スペクトラム分析とアナライザー比較によって、“耳で感じる音質傾向”を数値と視覚で検証した。
単なるスペック比較ではなく、「音がどう鳴り、どこにピークがあり、どう減衰していくのか?」を耳と目の両方で掘り下げる内容となっている。アクティブPUらしい整った音圧の中に、EMG89特有のクリーンさと厚みの共存がどう現れるのか。
※使用アンプや録音環境は固定のものを使用し、ピックアップの違いを確認。
🔧 比較条件(すべて揃えました)
今回の比較では、ピックアップ以外の要素を完全に統一し、音質の違いを純粋にPUの個性から見極めています。録音や解析環境は以下の通り:
- ピックアップ:
EMG89 - アンプ:
Hughes & Kettner GrandMeister Deluxe 40(全チャンネル) - パワー管:
JJ EL84 - プリ管:
TAD E83CC(V1) + TAD ECC83S(V2〜V3) - 録音方式:
REDBOXラインアウト → オーディオインターフェース直結(DAW:Logic Pro) - 解析ツール:
Audacity(FFT) / Logic Pro X(Analyzer POST)
出力やアンプ設定を含む全環境を揃えることで、PUそのもののキャラクター差を視覚・聴覚の両面から検証できるように設計しています。
今回の比較では、ピックアップ以外のすべての要素を固定し、音の違いを純粋にPUの特性から見極める設計にしている。録音条件と機材構成は以下の通り。
⚙️EMG89のスペック詳細と解説
メーカ公表値になります。
項目 | Single Coil | Dual Coil |
---|---|---|
共振周波数(Resonant Frequency) | 3.75kHz | 2.55kHz |
RMS出力電圧 | 0.6V | 1.25V |
ピーク出力電圧 | 0.85V | 1.75V |
出力ノイズ | -94dBV | -91dBV |
出力インピーダンス | 10kΩ | 10kΩ |
消費電流(9V) | 160μA | 160μA |
バッテリー寿命 | 約1500時間(通常使用) | 約1500時間(同上) |
🎛 Logic Pro EQ アナライザー比較
🎧EMG89 リードチャンネル

🎧 EMG89(デュアル) – リードEQ特徴まとめ
- プレゼンス帯(3.5kHz〜8kHz)に明瞭なピーク
- ローエンドは締まりがあり、中域がスムーズに立ち上がる
- サウンド全体がコンパクトにまとまり、音抜け重視のリード向き
🎧EMG89リードブースト

🎧 EMG89(ブーストON)
- ロー〜中域にかけて太さと重みが増し、音圧が明確に上昇
- 3kHz帯域に緩やかなピーク、倍音がリードトーンを引き立てる
- サウンドに粘りが加わり、伸びやかで“押し出す”ような音抜けに
🎧 EMG89(ULTRAチャンネル)

- 中低域(150Hz〜400Hz)がやや前に出て、音に密度感と厚みを演出
- 3kHz〜6kHzのプレゼンスは穏やかで、刺さらない柔らかい抜け感
- 全体として濃密で滑らかなサウンド傾向。ミドルゲインのリードに◎
🎧 EMG89(CRUNCHチャンネル)

- 100〜250Hzに向けて自然なローの膨らみがあり、暖かい太さを感じる
- 1kHz前後がスムーズに立ち上がり、音像にハリが出る
- 抜け過ぎず、厚みと押し出しのバランスが取れたクランチ向けトーン
🎧 EMG89(クリーンチャンネル)

実際に録音したサウンドを聴いてみると、スペクトルで見えた差はそのまま耳で感じるキャラクターにも表れている。
EMG89は、EMG85をベースにしたウォームで密度ある音像を持ちながらも、EMG81ほどの鋭さは抑えられており、むしろ「粘り」や「厚み」で勝負するタイプだ。
3kHz付近に自然なピークを持ち、抜けすぎずに“面で押し出す”ような音像が特徴的。
パワーコードやロングトーンでは、サスティンに深みが出て、空間を支配するような響きを得られる。
立ち上がりはほどよくマイルドで、アクティブPUながらパッシブのニュアンスも感じられる一本。
ミックス全体で聴くと、EMG81が鋭く飛び出す“刃”だとすれば、EMG89は全体を包み込む“布”のような存在だ。
鋭さよりも厚み、瞬発力よりも粘り──そこに魅力を感じるなら、EMG89は良い相棒になるはずだ。
🎧 EMG89 – チャンネル別ざっくり音キャラ比較

己っ心を入れなおせ



入れ替えません
チャンネル | 音の傾向 | 向いてる使い方 |
---|---|---|
クリーン | 透明感が高く、ローが締まっていて明るい。EQ的には高域が滑らかに伸びる。 | アルペジオ/クリーンバッキング/クリーンソロ |
クランチ | ローに自然な膨らみ、中域が前に出て粘りが出る。厚みと抜けのバランス型。 | リフ/軽めの歪みバッキング/骨太クランチ |
ウルトラ | 中低域が密で、柔らかく濃い。サスティンが長く、重心が下にある感じ。 | 落ち着いたリード/包み込むような空間づくり |
リード | プレゼンスにピークがあり、音像がコンパクトにまとまる。抜けが良く前に出る。 | メロディックソロ/ハイゲインリード |
リード(BOOST) | 音圧が上がり、3kHz付近が強調されて押し出しが強くなる。粘りと厚みが両立。 | スタック的な壁/ミックス内で抜けたい時 |
ここちゃん解説風コメント
🎸「チャンネルごとに“音の性格”が違うから、まるで5人のEMG89がいるみたいっ!」
🎧「クリーンはやさしめ、ブーストはちょい攻め!…って、音で会話できる感じがするね〜🐾」
✏️まとめ:スペクトルは、耳の裏付けになる
主観的な「音の違い」は、数値とグラフで確かに裏付けられる。
そして、グラフだけでは掴みきれない“音の質感”を、耳で感じ取ることで初めてEMG89の全体像が見えてくる。
今回の比較で見えたのは、EMG89が単なる切り替え式PUではなく、各チャンネルごとに明確な“音の個性”を持っていたということ。
どのモードでもノイズは少なく、音圧も整っていて、アクティブPUとして非常に完成度が高い。
🎸 クリーンは繊細で透明感、クランチは太くて張りがあり、ウルトラは包み込むような密度感。
リードは前に出てきて、ブーストを入れると一気に押し出しが強くなる。
この5つの性格が1基で使い分けられる──それがEMG89最大の武器だ。
最終的には、自分の曲やフレーズに合わせて、「どの場面で何を引き出したいか?」
それを手元だけで実現できる。
EMG89は、音作りの幅を広げたいギタリストにとって、非常に頼れるピックアップだと実感できた。
EMG89
価格:¥19,300
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