アクティブPUの「音質差」はスペクトルで語れるか?
ピックアップのレビューでよく聞くのが、「EMGは鋭くて抜ける」「Blackoutsは厚みがあって広がる」──。しかし、それらの印象は主観に大きく依存していて、機材環境やプレイスタイルにも左右されやすい。
本記事では、そうした“耳の印象”を数値で可視化するべく、EMG81(PA-2ブースター付き)とSeymour Duncan AHB-1 Blackoutsを同一条件で録音し、スペクトラム分析とアナライザー比較を行った。
単なるスペック比較ではなく、「音がどう鳴って、どこにピークがあり、どう減衰していくのか?」を視覚と耳の両方で掘り下げる内容だ。ピックアップ選びに迷っている人や、サウンドメイクの参考がほしい人は、ぜひじっくり読み込んでほしい。
🔧 比較条件(すべて揃えました)
今回の比較では、ピックアップ以外の要素を完全に統一し、音質の違いを純粋にPUの個性から見極めています。録音や解析環境は以下の通り:
- ピックアップ:
EMG81(PA-2ブーストON) / Seymour Duncan AHB-1(Blackouts) - アンプ:
Hughes & Kettner TubeMeister18(LEADチャンネル / ブーストON) - パワー管:
TAD EL84M - プリ管:
12AX7WB(純正) - 録音方式:
REDBOXラインアウト → オーディオインターフェース直結(DAW:Logic Pro) - 解析ツール:
Audacity(FFT) / Logic Pro X(Analyzer POST) - FFT窓関数:
ハミング窓(25kHz表示対応)
今回の比較では、ピックアップ以外のすべての要素を固定し、音の違いを純粋にPUの特性から見極める設計にしている。録音条件と機材構成は以下の通り:
📈 スペクトル分析(FFT)

このグラフは、録音したサウンドをAudacityでFFT(高速フーリエ変換)解析し、周波数分布を25kHzまで可視化したもの。
▶ EMG81(橙ライン)の傾向:
- 800Hz〜2kHzにかけて鋭くピークを形成
- 特に4kHz〜8kHzにかけて伸びが強く、「抜けの良さ」として現れる
- 倍音成分が立ち上がりやすく、1音1音の輪郭が明瞭
- ピッキングのアタックが際立つが、低域はやや引き締まってタイト
▶ AHB-1(青ライン)の傾向:
- 100Hz〜400Hzのロー〜ローミッドが自然に持ち上がっており、音に“土台感”がある
- 中域はなだらかで、音圧はありながらも飽和しにくい
- 高域は尖らず、耳に優しいマイルドな仕上がり
このように、同じフレーズを同じ音量で弾いても、スペクトルの分布がまったく異なる。これは単に「EQが違う」というよりも、PU自体の音の作られ方(コイルの巻き数や内部プリアンプ回路)に起因していると考えられる。
🎛 Logic Pro EQ アナライザー比較
DAW上のChannel EQで視覚化したスペクトラムがこちら。実際のミックス作業や音作りにおいては、このようなリアルタイムの視覚フィードバックが非常に重要になる。
EMG81

- プレゼンス帯(3.5kHz〜8kHz)に明瞭なピーク
- ローエンドは締まりがあり、中域がスムーズに立ち上がる
- サウンド全体がコンパクトにまとまり、音抜け重視のリード向き
AHB-1

- ロー〜ローミッド(150Hz〜400Hz)がわずかに強く、迫力ある音圧感
- 高域は自然にロールオフされており、耳に刺さる感じがない
- バッキングやリズムギターでの密度感・奥行きが生まれやすい
🎧 聴感からわかる違い
実際に録音したサウンドを聴いてみると、視覚的なスペクトル差はそのまま音の性格としても現れる。
- EMG81は、アタックの立ち上がりが速く、シャープでタイト。刻みのスピード感が出やすく、ハイゲイン環境でも潰れずに前に出てくる
- AHB-1は、低域がしっかり残り、音像に厚みが出る。リードよりも“壁を作る”ようなリズムに向いており、倍音もやや複雑
ミックス内で聴くと、EMG81はミッドの輪郭で勝負し、AHB-1はローの土台で支えるような役割を持つ。音が混ざったときに「残る音」としてどちらが欲しいか──それが選び方の分かれ目になるかもしれない。
音の性格ざっくり比較

解説頑張る〜



おやすみ💤「耳では聴いてる(たぶん)」
比較項目 | EMG81(+PA-2) | AHB-1(Blackouts) |
---|---|---|
高域の伸び | ◎(突き抜ける明瞭感) | ○(ナチュラルで耳あたりが良い) |
ローの押し出し | △(抑えめ、タイト) | ◎(ボトムが太く、空間を埋める) |
中域の主張 | ◎(前に出る、鋭い) | ○(なめらか、控えめ) |
音の立ち上がり | ◎(瞬発力がある) | ○(持続感重視) |
プレイ適性 | リード、ソロ、刻み | リズム、バッキング、壁音作り |
✏️まとめ:スペクトルは、耳の裏付けになる
主観的な「音の違い」は、数値やグラフによって裏付けられる。逆に、グラフだけでは感じきれない“質感”が、耳で聴くことで補完される。
この2つのPUは、どちらも完成度が高く、アクティブPUとしての魅力を十分に持っている。しかし、そのキャラクターは明確に異なる。
- EMG81(+PA-2)は、明快で速く、ソリッドな方向に特化している
- AHB-1は、柔らかく包み込むような空気感を作れる
最終的には、自分が「どの帯域で音を主張したいか?」を基準に選ぶと、後悔のない選択になるはずだ。
📌 この記事で使用している録音・グラフ・画像はすべて、
© erlis-one.com にて制作。リンク・転載の際はご一報ください。
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