アクティブPUの「音質差」はスペクトルで語れるか?
ピックアップのレビューではよく、「EMGは鋭くて抜ける」「Blackoutsは厚みがあって広がる」といった印象が語られる。──しかし、こうした評価は主観に大きく左右され、機材環境やプレイスタイルによっても変わりやすいのが現実だ。
そこで本記事では、Hughes & Kettner GrandMeister Deluxe 40(REDBOXラインアウト)を使用し、EMG81とSeymour Duncan AHB-1(Blackouts)を同一条件で録音。スペクトラム分析とアナライザー比較によって、“耳で感じる音質差”を数値と視覚で検証した。
単なるスペック比較ではなく、「音がどう鳴り、どこにピークがあり、どう減衰していくのか?」を耳と目の両方で掘り下げる内容となっている。ピックアップ選びに迷っている人や、GrandMeister DX40での音作りに悩んでいる人にとっても参考になるはずだ。ぜひじっくり読み込んでほしい。
🔧 比較条件(すべて揃えました)
今回の比較では、ピックアップ以外のすべての要素を固定し、音の違いを純粋にPUの特性から見極める設計にしている。録音条件と機材構成は以下の通り。
- ピックアップ:
EMG81 / Seymour Duncan AHB-1(Blackouts) - アンプ:
Hughes & Kettner GrandMeister Deluxe 40(LEADチャンネル / ブーストON) - パワー管:
TAD EL84M - プリ管:
TAD E83CC(V1) + TAD ECC83S(V2〜V3) - 録音方式:
REDBOXラインアウト → オーディオインターフェース直結(DAW:Logic Pro) - 解析ツール:
Audacity(FFT) / Logic Pro X(Analyzer POST) - FFT窓関数:
ハミング窓(25kHz表示対応)
出力やアンプ設定を含む全環境を揃えることで、PUそのもののキャラクター差を視覚・聴覚の両面から検証できるように設計しています。
本比較テストでは、アンプの設定を以下の通りすべて統一しました。
これにより、音の違いは真空管そのもののキャラクターによるものです。
- Master Volume:8時〜9時
- Resonance:12時(5)
- Presence:12時(5)
- Treble:12時(5)
- Middle:12時(5)
- Bass:12時(5)
- Volume:12時(5)
- Gain:12時(5)
- Boost:ON
📈 スペクトル分析(FFT)

このグラフは、録音したサウンドをAudacityでFFT(高速フーリエ変換)解析し、周波数分布を25kHzまで可視化したもの。
▶ EMG81(橙ライン)の傾向:
- 800Hz〜2kHzあたりに鋭いピークが形成され、音の輪郭をシャープに際立たせる
- 4kHz〜7kHzのプレゼンス帯域が伸びており、抜けの良さと抜群の存在感が得られる
- 倍音の立ち上がりが早く、刻みリフのスピード感やアタック感を強調
- ローエンドはやや抑えめで、引き締まったタイトな低域が特徴
▶ AHB-1(青ライン)の傾向:
- 100Hz〜400Hzあたりが自然に持ち上がり、音像の土台としてどっしり支える印象
- 中域は滑らかで、飽和せずに広がるような“空気感”を感じさせる
- 高域は緩やかにロールオフし、耳に刺さらずマイルドな印象
- バッキング時に音圧が落ちず、壁を作るようなサウンド構築に向く
このように、同じフレーズ・同じ音量で弾いても、スペクトル分布には明確な差が表れる。
これは単なるEQの違いではなく、ピックアップ自体の設計思想──たとえばコイル構造やプリアンプ回路の特性に根ざした違いであると考えられる。
🎛 Logic Pro EQ アナライザー比較
DAW上のChannel EQで視覚化したスペクトラムがこちら。実際のミックス作業や音作りにおいては、このようなリアルタイムの視覚フィードバックが非常に重要になる。
EMG81

- プレゼンス帯(3.5kHz〜8kHz)に明瞭なピーク
- ローエンドは締まりがあり、中域がスムーズに立ち上がる
- サウンド全体がコンパクトにまとまり、音抜け重視のリード向き
AHB-1

- ロー〜ローミッド(150Hz〜400Hz)がわずかに強く、迫力ある音圧感
- 高域は自然にロールオフされており、耳に刺さる感じがない
- バッキングやリズムギターでの密度感・奥行きが生まれやすい
🎧 聴感からわかる違い
実際に録音したサウンドを聴いてみると、スペクトルで見えた差はそのまま耳で感じるキャラクターにも表れている。
EMG81は、アタックが鋭く立ち上がり、ピッキングの輪郭がくっきりと前に出る。
タイトなローとシャープなハイの組み合わせにより、速い刻みやリードプレイで抜けの良さを発揮するタイプだ。
高域の抜けが強く、ブーストをかけなくてもミックスの中で自然に主張してくる。
一方のAHB-1(Blackouts)は、低域の密度が高く、音の芯が太い。
ミッドからローにかけての押し出しがあり、リズムギターや壁を作るようなバッキングで真価を発揮する。
倍音構成はやや複雑で、空間を包み込むような「重心の低い響き」が特徴だ。
ミックス全体で聴くと、EMG81は輪郭の明瞭さで前に出る音、AHB-1は厚みで支える音として住み分けられる。
どちらを選ぶかは、求める「存在感」が抜け”なのか“圧”なのか──そこが分かれ目になるだろう。
音の性格ざっくり比較

解説を聞けぇ〜



はいはい聞きますzzz
比較項目 | EMG81 | AHB-1(Blackouts) |
---|---|---|
高域の伸び | ◎(抜けが良く、明瞭) | ○(自然でマイルド) |
ローの押し出し | △(引き締まり、控えめ) | ◎(厚みがあり、土台を作る) |
中域の主張 | ◎(輪郭が強く前に出る) | ○(滑らかで広がる) |
音の立ち上がり | ◎(アタックが速い) | ○(持続感があり厚い) |
プレイ適性 | リード、刻み、速弾き系 | リズム、バッキング、壁音系 |
ここちゃん解説風コメント
🎸「EMG81は“前に抜けていく”音、AHB-1は“空間を埋める”音って感じだったよ!」
🎧「どっちも強いけど、用途でバチッと分かれるねっ!」
🎯 こんな人におすすめ
AHB-1は出力が高く、太くて迫力あるサウンドが得られますが、“激歪み系ピックアップ”と誤解されがちです。
実際には、歪みの量そのものはアンプや真空管の性能・設定に大きく左右されます。
AHB-1はあくまでピックアップの出力と音のキャラクターを提供するものであり、単体で「強く歪む」わけではありません。
EMGシリーズも、低ノイズで歪みやすいだけで“アクティブ=強烈な歪み”というわけではありません。
たとえばEMG81は、輪郭のシャープさによってパッシブで埋もれがちな音を切り裂くように浮かび上がらせる特性があり、
メタルやハードロック“だけ”というイメージは、もはや古いと言えます。
さらに、EMG81とAHB-1のユニゾンでも音がかぶることはなく、どちらの個性も損なわれません。
アクティブピックアップとはいえ、音作りにはアンプ設定や真空管の選定など細かな調整が不可欠です。
歪みだけが目的なら、エフェクターの活用で充分対応可能です。
❗ここちゃんからひとこと!
AHB‑1って、「めっちゃ歪むやつ!」って思われがちだけど、それちょっと違うかも〜!
出力は確かに高いけど、歪みそのものはアンプや真空管にかなり左右されるんだよ。
「激歪み系ピックアップ」って感じではなくて、太くて押し出しの強い音を作るのが得意!って感じなの✨
あと、EMG=歪むってイメージも、ちょっと誤解されてるかも。
EMGはすっごくノイズが少なくて、クリアだから“歪ませやすい”だけなんだよね。
特にEMG81は、音の輪郭をキリッと出すから、パッシブでは埋もれがちな音も浮かび上がってくるんだ〜!
実は、EMG81とAHB‑1を1本のギターに付けても、ちゃんと住み分けできるよ♪
どっちもアクティブだけど、キャラが違うから全然ケンカしないの💡
でもね、アクティブだからって「音作りがラク」ってことはなくて、アンプとかEQでしっかり仕上げる必要はあるのですっ!
歪ませたいだけなら…うん、エフェクターが一番手軽だよ!🎛️
✏️まとめ:スペクトルは、耳の裏付けになる
主観的な「音の違い」は、数値とグラフで確かに裏付けられる。
そして、グラフだけでは掴みきれない“音の質感”を、耳で感じ取ることで初めて全体像が見えてくる。
今回の比較で見えたのは、どちらもアクティブPUとして非常に完成度が高いということ。
ただし、そのキャラクターは明確に分かれている。
- 🎸 EMG81:立ち上がりが速く、鋭く前に出る。明快でソリッドなトーンが特徴。
- 🎛 AHB-1(Blackouts):低域に厚みがあり、全体を包み込むような広がりを持つ。
最終的には、自分のプレイスタイルで“どの帯域を主張したいか”が選択の決め手になる。
抜けを重視するならEMG81、厚みと空気感を重視するならAHB-1。
スペクトルは、そんな“耳の判断”に確かな根拠を与えてくれる。
📌 この記事で使用している録音・グラフ・画像はすべて、
© erlis-one.com にて制作。リンク・転載の際はご一報ください。
AHB-1
価格:¥16,800
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EMG81
価格:¥12,800
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